電車男

  • 2009.08.17 Monday
  • 00:31
評価:
コメント:よいレビューは2009/8/15を参照のこと

古本屋で100円で山積みになっていたのでふと買ってみた本。もちろん噂にはなっていたが、なんだかんだでドラマも、映画も見ていなかったし、読んでいなかったので買ってみた。

非常に面白い。正直感動した。電車男のこれ以上ない赤裸々な心情の吐露と、名無しのあけすけな物言いが実によい。2ちゃんねるという慣習として、文化として一切の虚言を廃した世界が舞台となって初めて可能なノンフィクションといえる。

ところで普段日常生活だと「まったくうちの女房ときたら」とか「まったくうちの旦那は」とか、たいていけなすような話しか聞かないが、2ちゃんねるの夫婦生活板では、大多数が自分の配偶者をこれ以上なく褒めあげているのは、やはりそれもまた大多数の人間の赤裸々な心情の吐露なのだろうか。

バーティミアス 

  • 2009.07.30 Thursday
  • 23:28
 それなり楽しかった本。女房は気に入っていた。めったに本を読まない彼女が読んだのだから、おもしろかったのだろう。

作者は物語の視点の変更が得意で、少なくともこの物語には主人公と言える人物が2人いる。中心となる少年と、悪魔のバーティミアスである。この二人の視点にかなりころころ変わり、最終的には二つの視点が融合するという大技に持っていく。そのほか、ヒロインの視点もかなり使われる。

ファンタジーとしては世界観の作りこみがいまいちだが※、わりとおすすめ。読みやすく、おもしろい。

※魔術師が支配する世界の構造についてもっと細かく描写されていてもよかった、たとえば自動販売機が何に置き換わっているかなどの日常の描写について。

反社会学講座 (ちくま文庫 ま 33-1)

  • 2008.03.10 Monday
  • 00:06
「社会学の9割はヘリクツと学者の思いつきでできてます」から始まる、ちょっとダークな社会学講座。年代別統計で、「最もキレていた17歳は昭和18年生まれの方々」とか日本中に広がる「ふれあい」公共施設分布度数とその傾向とか、ちょっと面白い話がたくさんはいっている。日夜デッドボディカウンティングに忙しいであろうディベーター諸君向けの社会学講座と言え、またそれがいかに非難されようともある意味で社会学の本流であることを示す良書。少なくとも僕は割と気に入った。

続 青空文庫

  • 2005.03.03 Thursday
  • 02:03
前回に少し書いたが、ひょんなことから青空文庫に参加した。その際に、僕が原本から書き写した作品がupされているようなので、ちょっとアピールしたい。

中島敦 「河馬」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card43813.html

萩原朔太郎 「易者の哲理」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/card43750.html

いやあ、なんというか、すごく大きな事をしたような錯覚がする、おすすめボランティア活動である。でかい図書館がめちゃめちゃ使い込める大学生という特権を生かして、みなさんも短い物でいいから、やってみてはどうだろうか。僕も春休みの間にもう一作品ぐらいはやってみたいと思う。

付記 やってみたいけど、参加の仕方がわからないという方のために、参加マニュアル作りました(授業のレポートみたいなやつを改変した)。ご利用下さい。ただ、いろいろあってパワポです。すみません。。

青空文庫

  • 2005.01.15 Saturday
  • 01:33
青空文庫というサイトを知っているだろうか?これは著作権が切れた作家の作品をウェブ上に掲載していくという試みである。昔は大した掲載量ではなかったけれども、今では、ちょっとした田舎の図書館を軽く凌ぐ量がある。

ところで、話は変わるが、自分はまったく対したことをしていないのに、人から感謝されたりすると微妙に気恥ずかしいものである。その相手がすごかったりすると特により一層である。

そんな例がこれ
「青空文庫を支える人々」

なんとここに名前が載ってしまった。別に強くコミットしたわけではなく、一般教養の授業のプロジェクトとして、12月の後半ぐらいに短い随筆を一つ入力して送っただけである。

いや、まさかこんなにクイックレスポンスだとは。しかも、あんな巨大サイトが。結構嬉しかった。

自分はもう学生じゃなくなるので、あんまりコミットできないが、まだまだ学生でディベートオフシーズンな皆様は是非参加されてみてはどうだろうか?結構楽しい気がする。


ヤングドラえもん

  • 2005.01.04 Tuesday
  • 07:44
携帯電話が鳴る。僕はそれを取る。

「のび太さん、今電話大丈夫?」

しずかちゃんだ。もう付き合って長いというのに、いつも通り礼儀正しい。ただ声の調子が、いつもと違うことに僕は気付いていた。

「あのね、のび太さん。できすぎさんが私にのび太さんなんかと別れて、俺と付き合えよって、言うの」

「え、ちょっと待ってくれ。できすぎは○○ちゃんと付き合ってるじゃないか。」

やはりだ。やれやれ別れ話かと正直僕は思った。一応は抗弁してみたものの、こんなのが意味がないことぐらい知っている。ところがだ。

「どうでもいいわよ、そんなこと。とにかく、それがほんとにいやらしい感じで。」

そう言って、しずかちゃんは泣き出してしまった。どうやら彼女にとっては大変なことらしいのだが、僕としては実は別れ話でなかったことにほっとしているのだ。さて、しかし、次は彼女の状況を解消しなくてはいけない。できすぎは僕の友達だし、彼女に彼を紹介したのも僕だ。できすぎが悪者じゃ都合が悪い。だから、僕はふと思いついたことを言ってみる。

「いや、それは変だよ。できすぎはそんなやつじゃない。きっとスネ夫がドラえもんの道具を使ってやってるんだ。もう一回、できすぎに電話をかけてみたら?」

「いやよ、いや。絶対いや。あの人、またしれっと『付き合おう』とか『別れれば』とか言い出すわ。」

この会話をしながら僕はすでに家を出て、できすぎの家のほうへと向かっていた。彼女の拒否はもっともだ。そもそも、なんでスネ夫がわざわざドラえもんの道具を使ってまで、彼女をだまさなきゃいけないのか、その動機がまったくわからない。間違いなく、悪いのはスネ夫ではなく、できすぎなんだ。けれども、だからどうしたと言うのだ。僕は彼女をなだめながら、とにかくできすぎに会おうとした。

「わかったよ。俺のほうから話してみるよ。ちょっと待ってて。」

できすぎを見つけた僕はそういって、携帯電話から耳を離した。僕はできすぎに追いつくなり、彼の右肩を右手で後ろから握りつけ、頭を彼の左肩の後ろから覗かせてこう言った。携帯電話は通話にしたままだ。

「やあ、できすぎ君、最近しずかと何かあった?」

「いや、何も」

「ああ、それならいい。ところでふと聞きたいんだけど、君の好きな子は誰だっけ?」

「○○ちゃんだよ。」

これでまあ、大丈夫だろう。いくぶん、強引だが、問題は解消され、悪いのはスネ夫になった。僕はできすぎを離して、携帯電話を耳に当てる。

「やっぱり、スネ夫のいたずらだよ。できすぎは知らないって。」

そう、しずかちゃんに話しかける。けれども、向こうからは返事はない。さっきまでの鼻水をしゃくり上げる音もしない。

「しずかちゃん、どうしたの?」

______________________

こんな夢を見た。いやまじで。初夢じゃなくてよかった。。

ハウルの動く城

  • 2004.12.29 Wednesday
  • 02:19
どうもいろんな人のblogを見るとよかったという評価である。まず最初に言っておきたいのは僕もこの評価には基本的に同意するということである。この映画を以前徹底的にけなした、「ビッグフィッシュ」あたり、つまり、「まあ、ESSのアフタームービーディスカッションにはむくんじゃない?」レベルのものだとは思わない。

しかしながら、どうにも気に食わないのは今回の作品でかなり取り上げられた、ヒロインは老女という設定がほとんど生かされていないということである。この設定が使われていたのは、せいぜい序盤のヒロインがハウルの城にたどり着くところまでである。そのあとは、この設定はただ物語の発展を妨げるだけのものとなる。

これには宮崎も気付いていたようで、後半に入ってからは随所でヒロインは突然、髪は白いままだが顔は若返るという奇妙な状態になる。ひょっとしたらこの状態に関してはなんらかの注意深く見れば気づける伏線があるのかもしれないが僕には見当たらなかった。しかしながら重要なことは、伏線があるにしろ、ないにしろ、そもそもそんな邪魔な設定ならば使わなければいいというところである。

かつて宮崎は、「紅の豚」で「ヒーローは豚であってもつとまる」ということを証明した。事実、紅の豚の中ではヒーローは一度しか人間に戻っていない。今回のハウルの動く城に脇役で出てくる案山子ですら、結構ヒーローしていた。

しかしながら、今回のヒロインが老女という設定はやや失敗気味であったこと、そして、前回の「千と千尋の神隠し」でも、比較的不細工な子をヒロインに持ってきたときも結局は、千尋を次第にかわいらしく描かねばならなかったことを考えると、やはり、「ヒロインは美人でなければ描けない」というところが宮崎の限界であろうか。しかしながら、これほど成功し、かつ歳も経た状態でさらに新しいストーリー展開に挑戦しようとする意気込みはすばらしい注1

ちなみに、ヒーローに伊達男を使うという、おそらく彼の初めての挑戦にはどうやら成功しているといっていいと考える。

注1 動く城の描写に関しては、(もちろん原作となる小説が存在することは知っているが)「宮崎駿の雑想ノート」に納められている、「多砲塔戦車」に関する考察が原点になっているものではないかと想像する。そこでのシナリオラフでは、宮崎らしい、少年と少女の冒険物語が書かれていたことから、やはり、今回の作品に際して宮崎なりに、新分野に挑戦しようとしたのであろうということが推察される。



パラサイト・イブ

  • 2004.11.16 Tuesday
  • 02:13
瀬名秀明の一時期バカ売れした小説。ブックオフの片隅に100円以下の価格でうずたかく積まれているのを発見、購入した。

十分に面白かったのだが、以前の記事で書いたように、超強硬派のSFファンの僕にはどうにも満足できなかった。ミトコンドリアが進化して、独自の意志を持ち、母体の人間を乗っ取るというのはいいのだが、そのミトコンドリアの思考が人間と同じであったり、人間の男に恋をしたりするのがどうにも我慢ならないのだ。ミトコンドリアであっても、我々人間とは違う生物であるからには仮に思考を持ったとしても、我々人間と同じ思考をしているはずがない。生物としての形態や、生存、種族を残す方法が全く異なるのであるから、そこには、人間とは全く違った思考方法がなければならない。

しかしながら、この作者はそのような点は全く無視し、「読者にとってわかりやすい」小説を書こうとする。巻末の解説で篠田節子はこのように述べている
後半、進化したミトコンドリアの意志と知性は、まったく人間レベルの、人間くさい物として描かれる。ハードSFであるなら、おそらくミトコンドリアを人間にとっては不可解な、独自の論理を持った得体の知れない知性体として描き出すことだろう。しかし、瀬名は物語をよりわかりやすい方向へ導く。… このミトコンドリアは人間と同じ発想をして、人間が理解できる言葉と論理をもちいて、さらには宿主の身体を借りて演説までしてしまう。SFがジャンル不明の超娯楽小説に代わる瞬間だ。

この「わかりやすい」というのは確かに重要である。仮にこのパラサイト・イブが上に書かれているような、SFとして書かれたならば、大衆の支持を得て、あの発行部数を記録することはまったく不可能であっただろう。なぜなら、それは多くの人にはわけがわからない小説として目にもとめられず処理されるからである。読むのはひょっとするとSFマガジンの購読者か、ハヤカワ文庫ならとりあえず買ってみる人か、ぐらいかもしれない。

しかし、そこまで理解した上で、なおかつ、僕はSFを支持したい。純SFは確かにわかりにくい。けれども、その歴史は人間の脳内でどれだけ完全に想像力のみで本来存在しない世界を作り上げられるか、いかにその世界観を発展させるかに挑戦する歴史である。

現在はすでに技術が高度になり、現実とかけ離れた世界観ですら表現が出来るようになっている。これは同時に、一番高度な部分をいきなり読まされても大部分の人にはそれが理解できないと言うことを意味する。ちょうど高等数学の問題をいきなり渡されても解けないのと一緒である。

ここで「読者あっての小説だから」と一歩下がることはできる。しかし、僕にはせっかく作られた素晴らしい技術を捨てるのは我慢ならない。

アフターダーク

  • 2004.10.12 Tuesday
  • 14:00
村上春樹の新作。

アメリカに行く前に買って、飛行機の中で読もうと思ったら空港の待ち時間中に読み切ってしまったという作品。まあ、別に内容が軽かったわけではない(全盛期に比べればやはり軽いが)。

前評判としては、以前の村上の作品とは大きく異なった作品世界を展開すると言うことだったが、残念ながら、村上はあくまで村上だった。

ある一晩の新宿での出来事をさまざまな違った視点から描き出すという視点は新しいようでいて、平凡であり、そしてもっとも重要なことに、このような「一つの出来事をさまざまな視点から」という試みは、すでに作者自身の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」で試されたものである。

そのような意味でも、この作品は以前の村上の作品を超えられていない。上記のような前評判があっただけにいささか残念ではある。しかしながら、ラストの夜が明けていくときのそれまで停滞していた時間が一気に進み出す状況の表現技法は新しく、見るものがある。

村上はしばしば、このような短編、あるいは中編をもう一度長編として練り上げ、良いものに完成させていくという傾向があるので、この作品がもう一度練り上げられることに期待したい。

百器徒然袋ー風

  • 2004.08.24 Tuesday
  • 22:10
京極夏彦のいわゆる京極堂シリーズの最新作、あるいは最新の外伝に当たる作品である。

あるいはこれが外伝であるかもしれないが、この作品にも熱意は感じられなかった。期待して次作を待っていたファンとして残念である。このような熱意のなさはこの京極堂シリーズの外伝に当たる4作すべてから、あるいは京極堂シリーズの本線では最新作、「陰摩羅鬼の瑕」からも感じられた。

ひょっとしたら残念ではあるけれども、もうこのシリーズは長く続きすぎたのかもしれない。

本来京極夏彦の持ち味はその作品を読んでいる時に、背筋が冷たくなるような真に迫った、読者を作中に引き込む感情の描写力、そしてその作品内の世界を引き込まれるに足るものとする背景の緻密な知識力にあるのではあるけれども、この「百器徒然袋ー風」に収録されている3作はそのような賛辞にふさわしい物とは思えなかった。あえていえば、「五徳猫」のみは読む価値があるかと思う。

全くの予断ではあるけれども、このレビューを書くに当たって漢字変換でものすごい時間を費やした。「陰摩羅鬼の瑕」を打つ時などなど大半は手書き入力である。正直、京極の作品のレビューはあまり書きたくない。作者はどのようにして、この小説を書いているのだろうか?手書きか?しかし、手書きにしてはあまりに量が多い気がする。

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