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    • 2013.10.10 Thursday
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    ムダヅモ無き改革

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      評価:
      コメント:ひさびさにお勧めのコミック

       久々に読者諸兄に自信とともにお伝えする作品。これは面白い。まったく間違いない。

      敵につけられた1583兆点の大差をひっくり返すために、主人公がとった行動とは?
      相手の細工を封じるために、投入された劣化ウラン製の牌、その中に仕込まれた13枚のプルトニウム牌の使い道とは?!

      さあ、気になったら You'd buy it now!

      マージャンがわからなくてもそれなり楽しいと思うが、マージャンがわかったからといって、読み解くのにその技術を使うわけではない。個人的には阿佐田哲也を大和田秀樹は超えた。

      シグルイ

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        知る人ぞ知る残酷時代劇漫画、連載はもちろんマイナー誌。作家は山口貴由氏、以前に「覚悟のススメ」という作品でみなさまにはご紹介した。

        「覚悟のススメ」でもそうだが、山口の素晴らしいところは、「ちょっといっちゃってるヒーローが活躍する、ちょっといっちゃってる世界」をギャグとして描くのではなく、真実「かっこいいもの」と信じて描けるところにある。もちろんこの「シグルイ」もすばらしく常軌を逸している。

        山口の世界は若干我々が生きている世界とは斜めにずれている。であるから、必然的にそこで認められ活躍するヒーローは我々から見れば少々常軌を逸していることになる。

        以前にも書いたがSFというものは畢竟世界観の構築である。通常SF作家はその世界を意識して構築するが、山口はどうやらその世界にもともといるらしい。

        天然とよばれる種類の芸人がいる。これはちょっとずれた言動をすることで受けを狙うボケを、もともとずれているために意識せずに行うことができる人たちである。

        であれば、我々は山口をこう呼ぶべきかもしれない、「天然」と。

        RAINBOW

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          安部譲二の原作になる漫画。以前に紹介した「鉄腕ガール」と同じく、ほっておくと余裕で人目に触れることなく風化していくことになるので紹介。

          「鉄腕ガール」は作品自体は実にマイナーだとは言え、モーニングに連載していた。しかしながら、こいつはもっとひどい。なにしろ「ヤングサンデー」、略して「ヤンサン」である注1

          少年誌、あるいは青年誌ではしばしば、競合誌に対抗するために、また勝ち馬に相乗りするために、他誌の売れている漫画と同系列の漫画を連載させることがある。例えば、少年ジャンプの「ワンピース」に対する、少年マガジンの「レイブ」であるとか、同「GTO」に対する、同「ROOKIES」であるとか。

          翻って、今日紹介するRAINBOWはどうやら「鉄腕ガール」に対抗するものであるらしい。時代設定、絵柄などどうみてもそれとしか思えない。しかしなんでまた、別に当たったわけでもない鉄腕ガールに対抗しようと思ったのか?まったくの謎である。編集担当者が酩酊状態か、薬物乱用状態であったとしか思えない注2

          しかしながら、掲載雑誌はともかくとしてこの作品はすばらしい。敗戦直後という時代を描くのに安部譲二を持ってきたところはさすがに小学館である。彼は少年院を舞台に、いわれのない暴力と、屈辱に耐えつつも、夢を持って、行動する少年達を描く。

          その心情描写、描きたいとする焦点、舞台設定の緻密さなどを考えれば、この作品は文学的には鉄腕ガールよりも上位に来る。実際、私は上位だと思う。しかしながら、やはり高橋ツトムの躍動感のある線の前には漫画としてはやや劣るとしなければならないだろう。

          けれども、私はこの作品は好きだ。

          注1ちなみに2chのこの雑誌に関するスレッドの題名は「休刊…なのか!?週間ヤングサンデー 」である。
          注2ちなみに上記スレッドの前々スレは「「ただいま迷走中?週刊ヤングサンデー」 である。

          ジョジョの奇妙な冒険

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            こんなことをいう人がいる。曰く、「ジョジョが活躍しないから、第五部は嫌いだ。」

            しかしながら、この考え方は根本的に間違っている。ジョースター家かそうじゃないかなんて正直どうでもいい話なんだ。重要なのはそこじゃない。しかも、そもそもジョルノ・ジョバーナなんて、ジョースターを名乗ってすらいないじゃないか。ジョバーナ家の血統なんて知ったことか。もちろん、父親のブランドーの血統なんか問題にならない。問題になるのは、せいぜい空条家までだ(その意味で空条・ジョリーンはすこしは問題にすべきだ)。

            そう、重要なのはブルーノ・ブチャラティかブチャラティじゃないかだ。それに比べたらジョースターかジョースターじゃないかなんて瑣末な問題だ。考慮するにも及ばない。

            僕たちは第五部を読むときにもっともブチャラティに注目しなければならない。

            どうしてもブチャラティには心揺さぶられないという人(そんな人がいるとは信じがたいが)はせめてプロシュートを見てくれ。

            まったく、方向性はともかくやつらはすばらしいギャングスターだ。

            ガラスの城の記録

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              手塚治虫の作品である。冷凍睡眠という科学技術によって25年間眠らされた人間が主人公である。主人公は冷凍睡眠によって、良心を破壊されており、さまざまな事件を巻き起こす、そういったストーリーである。

              作品自体は、手塚らしく、極めて上手くまとまっている。この作品に関しては若干それが悪い方に出てしまい、上手くまとまりすぎてつまらないという点はある(面白くなる前に打ち切られてしまったようにも見える)。

              問題は秋田文庫にこの作品の解説として共に収録されている尾崎秀樹氏の評論である。彼はその中でこの作品をこのように読み解く、

              ストーリーは完結していないが、作者のねらいは明らかだ。機械の主人であったはずの人間が機械に犯され、脳細胞の異常をきたし、人間社会の秩序の破壊者となるといった内容を通して、厳しい警告を発しているのだ。汚染による自然環境の破壊が、私たちの日常生活をおびやかしている現在、「ガラスの城の記録」が提示している問題は重要な意味をもつ。

              これは全く間違っている。まず尾崎は作者が「厳しい警告を発している」というが、何に対して警告を発しているのか作中の表現では極めて不明瞭である。尾崎はこの警告の対象として「汚染による自然環境の破壊」を提示するが、何故、冷凍睡眠による良心の破壊が環境破壊に対する警告となるのかは不明瞭である。

              たしかに手塚はしばしば、作中で科学技術に対する懐疑を描くことがあり、それが主題となる作品もあるが(例としてアトムの最後を参照されたい)、この作品では上記のような理由によって、科学への懐疑が主題とはなり得ない。

              この作品の主題は、前半部で主人公として描かれている冷凍睡眠で良心と愛情という感情を破壊された一郎と、後半部で台頭してくるもう一人の良心と愛の具象として描かれるキャラクター、本日の争いを通して、それらの重要性を問うことであり、また、そのように見ることの方がはるかに合理的で説明しやすい。

              この作品に寄せられている尾崎の評論には他にも意味をなさない部分が散見され、全体としてのまとまりもない。劣悪な批評文である。

              覚悟のススメ

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                この漫画の好悪は人によって大きく別れるところらしい。私は好きである。

                作品は大時代的な、若干汗くさいヒーロー物である。そして、時代遅れな、そして一見すればギャグにしか見えないような表現が頻繁に見られる。というよりも、この漫画のテイスト自体がその文脈の中にある。人によっては、これをただのギャグマンガだと見なすであろう。しかしながら、この漫画はただのギャグマンガではない。熟読すればわかることだが、作者はこれを本気で書いている。

                こうした作品は得てして、読者と作者がすれ違い、両者のフラストレーションをためるだけのつまらない物に終わりやすい。しかしながら、この作者の素晴らしいところは自分の感性が人とずれていることを理解して、その上で、あえて、自分の持っている世界観を前面に押し出していることである。

                この才能のために、読者と作者はすれ違わない。作者は一面では常識人としての思考を持ち続け、そして、常識と非常識の垣根を常に意識しながら、あえて、自分の内面世界を表現するためにその垣根を越える。そして、作者はまた、その内面世界が異端であり、理解されがたい物であると認識しているが故に、読者がそれについてこられるよう、さまざまな配慮をしている。

                結果として、読者は作者の内面にある世界観を知ることが出来る。しかしながら、それがあまりにも異端であるが故に、やはり気に入るかどうかは人による。この作風ではしかたないことではあるが。

                クイーンエメラルダス

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                  言わずとしれた松本零士の宇宙海賊物。

                  正直、私の中で松本零士の評価は低かった。それはおそらく銀河鉄道999という素晴らしく名前は売れているが、ストーリー漫画として正直低い点を付けざる終えない作品と、アニメの方があからさまに良くできている宇宙戦艦ヤマトのせいであろうと思う。

                  上記2作品に関して僕の評価が低いのは、そのストーリーやキャラクター設定の問題ではなく、そのコマ割の問題である。このような古い漫画家では頻繁にあり、またその当時はそもそも技法が確立されていないために仕方がないのだが、コマとコマの間にあまりにもストーリー上の大きな隔たりがあり、そのために全体が大味な印象になるのである。

                  評論家の呉智英氏によれば、このコマ割の技法が緻密になってきたのは、週刊誌が漫画の発表媒体の主体となってきて、より一つの話に多くのページを使うことができるようになった後のことらしいi ので、月刊誌が主体であったころの作家である、松本の作品のそうした傾向を持って、彼を攻める要因とするのは酷である。むしろ、その時代に生きながらも、現代でも違和感のないコマ割で作品を書いていた手塚がずば抜けているとするべきであろう。しかしながら、やはり現代の技法に慣れた私の目ではやはり彼には高い点数をつけられない。

                  話がそれた。この作品でもやはり上記のような欠点はあり、そしてまた、時代が時代故に、(現代からすれば)異常に「男らしさ」のようなものを強調するところはあるが、しかし少年マンガとして、少年に夢を持たせる、夢を持つというロマンを、さらに宇宙、海賊という古典的なまでに(実際に漫画としてはこの作品は古典であるが)ロマンチックなシュチュエーションの中で描いていくこの作品は、「ロマン」という一点に集中しているだけに見るべき物があるように感じられる。

                  i 呉智英 「現代マンガの全体像」 株式会社双葉社 1997


                  鉄腕ガール

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                    「地雷震」で有名な高橋ツトムの力作。個人的には非常に評価が高い。ただし、誰もしらない。このままこのすばらしい作品が生まれては消えていく膨大なB,C級漫画の中に埋もれていくのは耐え難いので紹介する。

                    週刊モーニングにおいて2000年ごろに連載された、この作品への作者、そして編集者、出版社(講談社)の力の入れ方は半端なかった。ぜひ本屋などで見かけることがあったら(注文しない限り、見かけることはほとんどないと思うが)、ぜひ手に取ってみてほしい。他の漫画単行本に比べて外装においてすら、以下のような相違がある。

                    ・まず紙質がいい。これはおそらく純文学のハードカバーに使われる紙である。
                    ・非常に凝ったことに、単行本カバーだけでなく、カバーの裏の表紙もカラー。金かかってます。
                    ・他にも以上に多いカラーページ。

                    これだけのことをやろうとすれば編集者には相当な根性と努力の交渉が必要なはずである、しかし、それを可能にさせるだけのものをこの作品は持っていた。

                    ストーリーも斬新である。舞台は大戦後すぐの日本、主人公の加納トメは当初女給だったが、ひょんなことから、そのすばらしい強肩を見いだされ、女子プロ野球の投手に。身につけた投法はなんとザトペック投法。全身のバネを使った直球一本勝負のみ。しかも、それで海兵隊のごついあんちゃんたちをばったばったと切り倒す。とにかくかっこいい。

                    魔球など出てこない、しかし、全然野球漫画ではない。一見フェミニズム的な要素を持っているようにも見えるが、しかし、この漫画をその視点だけから読むのは幼稚である。青年漫画ではなく、あえて少年漫画を読むつもりで、加納トメのザトペックからの快速球を見てほしい。圧倒的に見せつける「力」。高橋ツトムの切れ味のある絵のタッチが、またその真剣勝負を煽るのにフィットしている。

                    アトムの最後

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                      手塚治虫は「鉄腕アトムの最後」に関する作品を3作書いている。皆さんご存じだろうか?2作は悲劇で、喜劇は一つだけ。

                      今回はその中でもっとも報われないと言われる「アトムの最後」について。

                      おそらく、この話を知っているのはよほどのマニアの方だけだと思うのであらすじを書く。

                      部隊は遠い未来、主人公の丈夫は小さい頃からさまざまな武器を与えられそれを使いながら育っていく。そして、青年らしく恋をする。相手は幼なじみのジュリー。

                      二人は結婚しようと決意する。しかし、その時、両親から、実は自分が闘技場で決闘するために、アンドロイドによって育てられた人間であることを知らされる。もちろん、両親はアンドロイドである。その時代には人間はアンドロイドによって娯楽用に扶養される存在になっていたのだ。

                      丈夫はそれをしって武器を持ってジュリーを連れて逃げ、博物館に展示されていたアトムを発見しよみがえらせる。

                      アトムは丈夫とジュリーのためにアンドロイドの追っ手と戦って、壮絶に爆発。しかし、そのとき丈夫は最愛のジュリーが実はアンドロイドであることを知る。絶望した丈夫はジュリーを殺し、そしてアンドロイドの追っ手によって殺される。


                      これは徹頭徹尾、悲劇である。しかも、アトムがわざわざ出てきて死ななければならない理由すらないという訳のわからなさ。

                      アンドロイドと人間の間にも成立する変わらぬ愛のすばらしさを訴えたわけではない。丈夫はジュリーを殺しているのだ。

                      機械化が進み、機械に人間が支配される恐怖を描いているという観察は一部当たっているだろう。

                      しかしながら、僕にはこの作品は手塚治虫という作家が、自分が鉄腕アトムという作品によって規定されてしまうことをおそれて、そのアトムという呪縛を抜け出そうとした、そういうあがきによってできあがった作品に見える。丈夫の闘士として規定された人生とそれを破ろうとする努力はその現れではないだろうか?ただの想像だが。

                      あれほどの大作家であっても、偉大な作品はやはり作者を縛るものなのだろうか。

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                      好みがあえば面白い。レビューは7/25日のものを参照されたい。
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