アトムの最後

  • 2004.04.08 Thursday
  • 18:49
手塚治虫は「鉄腕アトムの最後」に関する作品を3作書いている。皆さんご存じだろうか?2作は悲劇で、喜劇は一つだけ。

今回はその中でもっとも報われないと言われる「アトムの最後」について。

おそらく、この話を知っているのはよほどのマニアの方だけだと思うのであらすじを書く。

部隊は遠い未来、主人公の丈夫は小さい頃からさまざまな武器を与えられそれを使いながら育っていく。そして、青年らしく恋をする。相手は幼なじみのジュリー。

二人は結婚しようと決意する。しかし、その時、両親から、実は自分が闘技場で決闘するために、アンドロイドによって育てられた人間であることを知らされる。もちろん、両親はアンドロイドである。その時代には人間はアンドロイドによって娯楽用に扶養される存在になっていたのだ。

丈夫はそれをしって武器を持ってジュリーを連れて逃げ、博物館に展示されていたアトムを発見しよみがえらせる。

アトムは丈夫とジュリーのためにアンドロイドの追っ手と戦って、壮絶に爆発。しかし、そのとき丈夫は最愛のジュリーが実はアンドロイドであることを知る。絶望した丈夫はジュリーを殺し、そしてアンドロイドの追っ手によって殺される。


これは徹頭徹尾、悲劇である。しかも、アトムがわざわざ出てきて死ななければならない理由すらないという訳のわからなさ。

アンドロイドと人間の間にも成立する変わらぬ愛のすばらしさを訴えたわけではない。丈夫はジュリーを殺しているのだ。

機械化が進み、機械に人間が支配される恐怖を描いているという観察は一部当たっているだろう。

しかしながら、僕にはこの作品は手塚治虫という作家が、自分が鉄腕アトムという作品によって規定されてしまうことをおそれて、そのアトムという呪縛を抜け出そうとした、そういうあがきによってできあがった作品に見える。丈夫の闘士として規定された人生とそれを破ろうとする努力はその現れではないだろうか?ただの想像だが。

あれほどの大作家であっても、偉大な作品はやはり作者を縛るものなのだろうか。

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