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    パラサイト・イブ

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      瀬名秀明の一時期バカ売れした小説。ブックオフの片隅に100円以下の価格でうずたかく積まれているのを発見、購入した。

      十分に面白かったのだが、以前の記事で書いたように、超強硬派のSFファンの僕にはどうにも満足できなかった。ミトコンドリアが進化して、独自の意志を持ち、母体の人間を乗っ取るというのはいいのだが、そのミトコンドリアの思考が人間と同じであったり、人間の男に恋をしたりするのがどうにも我慢ならないのだ。ミトコンドリアであっても、我々人間とは違う生物であるからには仮に思考を持ったとしても、我々人間と同じ思考をしているはずがない。生物としての形態や、生存、種族を残す方法が全く異なるのであるから、そこには、人間とは全く違った思考方法がなければならない。

      しかしながら、この作者はそのような点は全く無視し、「読者にとってわかりやすい」小説を書こうとする。巻末の解説で篠田節子はこのように述べている
      後半、進化したミトコンドリアの意志と知性は、まったく人間レベルの、人間くさい物として描かれる。ハードSFであるなら、おそらくミトコンドリアを人間にとっては不可解な、独自の論理を持った得体の知れない知性体として描き出すことだろう。しかし、瀬名は物語をよりわかりやすい方向へ導く。… このミトコンドリアは人間と同じ発想をして、人間が理解できる言葉と論理をもちいて、さらには宿主の身体を借りて演説までしてしまう。SFがジャンル不明の超娯楽小説に代わる瞬間だ。

      この「わかりやすい」というのは確かに重要である。仮にこのパラサイト・イブが上に書かれているような、SFとして書かれたならば、大衆の支持を得て、あの発行部数を記録することはまったく不可能であっただろう。なぜなら、それは多くの人にはわけがわからない小説として目にもとめられず処理されるからである。読むのはひょっとするとSFマガジンの購読者か、ハヤカワ文庫ならとりあえず買ってみる人か、ぐらいかもしれない。

      しかし、そこまで理解した上で、なおかつ、僕はSFを支持したい。純SFは確かにわかりにくい。けれども、その歴史は人間の脳内でどれだけ完全に想像力のみで本来存在しない世界を作り上げられるか、いかにその世界観を発展させるかに挑戦する歴史である。

      現在はすでに技術が高度になり、現実とかけ離れた世界観ですら表現が出来るようになっている。これは同時に、一番高度な部分をいきなり読まされても大部分の人にはそれが理解できないと言うことを意味する。ちょうど高等数学の問題をいきなり渡されても解けないのと一緒である。

      ここで「読者あっての小説だから」と一歩下がることはできる。しかし、僕にはせっかく作られた素晴らしい技術を捨てるのは我慢ならない。

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        • 2013.10.10 Thursday
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        コメント
        ヘヴィ級のSFファンであり、所持している文庫の大部分が背表紙の青いハヤカワ文庫だったりする須藤です。

        >純SFは確かにわかりにくい。けれども、その歴史は人間の脳内でどれだけ完全に想像力のみで本来存在しない世界を作り上げられるか、いかにその世界観を発展させるかに挑戦する歴史である。

        さすが桑田さん!!
        SFの心がわかっていらっしゃる!(涙)
        SFは世界観が全てと言っても過言ではありません。
        ある意味リアルから最も離れた世界を描かなくてはならないが故に、細部に至るまでの徹底的なリアルさ、世界観の完成度が要求されるジャンル、それがSFです。

        僕ももちろんパラサイトイヴは読みました。
        そして桑田さんと全く同じ感想を抱きました。
        完全な世界観を追求してこそ、SFです。
        なぜミトコンドリアが人間と同じ価値観で動いてしまうのでしょうか?

        アイザック・アシモフの「神々自身」では三つの性別を持った気体状生命体が、克明に描写されています。
        「ソラリスの陽のもとに」という作品では、惑星そのものが生物です。しかも人間の常識が全く通用しません。

        少しは瀬名秀明にも、彼らを見習ってもらいたいものです。
        • すどう
        • 2004/11/16 9:51 PM
        どうすーの手によって、本来、小説批評以外の目的も持って書かれた文章はただのSF談義と化していく、、まあ、流れにそってSF談義をすると、、

        どうすーの言いたいことはわかる。仮に瀬名がSF作家であったとしたら、パラサイト・イブがSFであったとしたら、彼は罵倒されてしかるべきだ。

        しかしながら、彼はSF作家じゃないし、しかもこの作品はSFではなくホラーであり、エンターテイメントだ。その観点から見れば、彼は素晴らしい。したがって、彼に対して世界観がどうこういってけなすのは、夢枕漠に対して、「お前の文章表現はほんとになってない」と純文学の見地からけなすことと同じくらいばかげている。なにしろ彼はそんなところで勝負してないからだ。
        • くわだ
        • 2004/11/17 2:40 AM
        申し訳ありません。
        忘れていました。パラサイトイヴは「新感覚ホラー」として売り出されたんですよね、SFとしてじゃなくて。
        その後の彼の作品がどんどんSF寄りになっていったので、すっかり忘れていました。
        読んだ感覚が全くホラーっぽくなく、緻密な印象を受けるのも勘違いに貢献していたかもしれません。

        僕は「外国児童文学→SF」という、すさまじく偏った読書遍歴しか持ち合わせていない人間なので、いかんせん世界観の完成度で文学を断じてしまう傾向があるようです。
        しかしくわださんの言うとおり、もちろん瀬名秀明は「そんなところで勝負はしていない」わけで、エンターテイメントはエンターテイメントとして評価するべきだと確かに思います。
        っていうか、事実純文学の観点から論じたら、SFなんて最低のジャンルになっちゃいますよね(汗)
        批評というのは、自分の高い立場から勝手にするものじゃなくて、その作品が「勝負している」次元に自分の視点を置くことで、はじめて成り立つというわけですか。。
        もう、さすがとしかいいようがないです。
        あらゆるジャンルを読み込んでいるくわださんだから言えることです。
        • どうすー
        • 2004/11/17 10:17 PM
        発言はできるだけ控えるようにしているのですが、ここまでごひいきにしていただいてスルーというわけにもいかないかと。


        一般的にはSFにおける予想外の不評は一般大衆の理解を超えたことが原因であり、大衆迎合の堕落を嘆く図式として解釈されています。もちろん、その側面もあります。


        (そのこと自体に対するそもそもの疑問として、むしろより多数の一般大衆の理解を得ていたではないかというのがあるわけですが。私は作者自身もよく理解していない知的好奇心をくすぐるだけのジャーゴンを連発するだけの人々より百倍わかりやすい物語を展開している自信があります)


        しかし、私は別のところに原因を求めます。それは大衆が甘い話に引っかかりやすいということです。彼らは将来起こるかもしれない災害よりも今差し迫った問題の方が重要だと考えるようです。それが解決するかどうかは将来の話であるのにです。彼らは言います。「だって問題が今起こってるのは確かだし」それをいうなら今災害が起きてないのは確かです。これが等価であることがわからない人はSFには関わらない方がいいと思います。即座に専門用語に変換できない人、直感的に理解できない人は相当数いるのではないでしょうか?


        「わかる」というのは途方もないことです。みなさんも数学の勉強のほとんどを問題演習に費やしたことでしょう。それは定義を覚えただけでは問題が解けないからです。「わかるからとける」のではありません。「とければそのうちわかる」のです。わかったつもりでは本番の試験で必ず失敗します。それがSF離れの原因となっているのではないでしょうか。


        実はこれはここ数年の大きな潮流です。そしてあの物語に秘められた想いは実はこの潮流を変えることだったのです。そしてそれは歴史的大失敗に終わりました。それは実に爽快な出来事でもありました。


        まだまだありますが、SFに託せるのはこれが限度でしょうか。まあ、あえて分析してみたものの正直なところあのレビューにはポカーンという感じですね。わけわからん。。
        • petit
        • 2004/11/30 4:38 AM
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